ベルトトレーニングを行う女性とトレーナー

こんにちはパーソナルトレーナーの渡辺開人です。

スポーツやトレーニングをするときだけではなく、日常生活を送るうえでも筋肉は必要になります。正しくは生きていくだけで筋肉は必要です。もしも筋肉がなかったならば、起き上がることも歩くこともできません。さらには、内臓にも支障が出ます。

そんな大切な筋肉ですが、実際にどのようなものなのかを学ぶ機会というのはあまりありません。学生時代、スポーツ学科に通っていた人ならともかく、一般人で学問的に筋肉に触れるということはそうそうないでしょう。

今回は、そんな身近にあっても実際はよく知らない筋肉について細かく学んでみましょう。

筋肉の仕組みはモーターと同じ

筋肉の仕組みは、基本的に車のモーターと同じだと考えていただければと思います。力は強いけれどもスピードが出ないというタイプの筋肉もあれば、スピードは出るけれども力はないというタイプもあります。

ここでは筋肉の特性を見ていきましょう。

スポーツをする上では、力よりもスピードが重要

以前の記事で、筋肉の「静的特性」についてみていきましたが、これは力を発揮する仕組みについて理解すること、データを集める際に便利な指針になるため、研究の分野でよく利用されてきました。

しかし、実際の運動においては、止まったまま大きな力を発揮するという機会はなかなかないと思います。何かしら動く時に大きな力が必要になりますよね。スポーツを行う上で、質や強さを考える場合、どれだけ力を発揮できるかというよりも、どれだけスピードを出せるかということが問題になることも多いでしょう。そこで、筋肉が収縮しているときにどういう速度を出せているのか、つまり「動的特性」が重要になるということです。

といっても、筋肉の中身を見ながらというわけにもいきませんので、筋肉の代わりにモーターを思い浮かべてみてください。模型の自動車を走らせるときや、自動車の中のファンを回すための動力がほしいときに、それぞれの用途にあった動的特性をもつモーターを使用しますよね。モーターの動的特性とは、「回転力(力)」と「回転速度(速度)」の関係です。モーターのカタログなどを見るとどちらも数値で表されています。

モーターにはさまざまなタイプがあり、力は強いけれども速度が出ないというものもあれば、速く回るけれども力は弱いというものもあります。マニュアルの車に乗ったことがある人ならばわかるかもしれませんが、1速は大きな力を発揮しますがスピードは出ないですよね。そのかわり、2速3速とギアを上げていけば、力は減っていくもののスピードが出るようになります。つまりはこういうことなのです。

モーターの力や速度関係を調べるのは非常に簡単で、電気系統がわからなくとも誰にでもできます。モーターを電源につないで回せばいいのです。その上で回転軸に対して抵抗をかけていったときに、回転速度がどのように変わるのかを見ればいいのです。抵抗が増えていけば徐々にスピードは落ちていきます。さらに抵抗を増やすとやがて止まってしまいますが、この止まったところがこのモーターの最大出力ということになります。これは筋肉でいうところの「等尺性最大筋力」にあたります。

その一方で、モーターが最も早く回るのはどんな時かというと、何にも負荷がかかっていない時です。私たち人間も重いものを持って走った時と、何も持たないで走った時では何も持たない時に走った方が断然早いですよね。これと同じことです。

ちなみに、ちょっと話はズレてしまいますが、もしも一般的な直流モーターを購入することがある場合、自分の求めている力がそのモーターの最大出力の半分程度、もしくは求めているスピードが最大スピードの半分程度という数値のものを選べばよいでしょう。求めている力が最大出力あるいは最大スピードギリギリの場合は、つねにそのモーターに最大の負荷をかけることになりますので、モーターの寿命が速くなってしまうと考えてください。

速度に関する筋収縮時の力

体の話をしているのに、なぜモーターの話をしたのだ⁈と思う人もいることでしょう(笑)モーターの話を書く際の最初の方に少し書きましたが、筋肉はモーターと同じように考えられるからです。力は強いけれどもスピードが出ないというタイプもあれば、スピードはあるけれども力は出ないというタイプもあります。自分が求めるパフォーマンスに対して、どのように筋肉を作っていくかと考えた時に、単純に力だけではなく、速度も視野に入れてアプローチしていくことが必要になります。そこでモーターと同じように筋肉の力関係をみていきましょう。

筋肉にかける負荷を大きくしていったときに、筋肉が出せる速度がどのように変わっていくかということを上腕二頭筋(ひじの屈筋)で調べる研究は今まで頻繁に行われてきました。いろいろなタイプの負荷をかけて、おもいっきりひじ屈曲を行ったときの速度を測定する研究です。かける負荷をどんどん重くしていくと、屈曲するスピードは徐々に遅くなり、やがて動かせなくなってしまいます。

これは想像しやすいと思いますが、軽いものは速く動かせるけれども、重たいものは速くは動かせないですよね。トレーニングで考えると、バーベルやダンベルを重くしていくと、持ち上げるスピードが遅くなり、やがて持ち上げることができなくなってしまうでしょう。研究でも同じような結果が出ます。

双曲線状の関係はどんな筋肉にも共通している

スピードの落ち方としては、負荷が軽いところの方が険しく、だんだんとなだらかになっていきます。完全に止まってしまったところが、等尺性最大筋力ということになります。

その一方で、負荷がゼロの状態で筋力が収縮できるスピードのことを、無負荷最大短縮速度といいます。とはいっても、地球上では重力がありますので、負荷ゼロを体験するというのは研究機関にでも行かないかぎり難しいことです。

じつは力の速度関係が双曲線状になるという関係は、あらゆる筋肉に共通した特性なのです。貝・昆虫・カエル・ヒト…などなど、動物種の筋肉はすべて同じです。これは、筋収縮の原動力となる「ミオシン」というたんぱく質で調べても同じ特性を示すことがわかっています。

この特性をどのように解釈し、技術の練習やトレーニングにどのように生かしていくか。競技力アップという面で考えた時に、かなり重要な意味を持つのではないでしょうか。

 

最大筋力の30~35%の負荷が最も効果的である

前項で、筋肉の動的特性としての力と速度関係について紹介しましたが、こちらではその関係から導き出される力学的パワーについて説明していきましょう。

物が動かないと筋肉は仕事をしたことにならない

実際のパフォーマンスにおいて、力学的パワーというものが非常に重要な意味をもっていきます。

物を持ち上げたり動かしたりするという行為は、筋肉の働きとしては「アイソメトリック」から「コンセントリック」の領域になります。力を出していてもギリギリ物(負荷)が持ち上がらないところが等尺性最大筋力に等しい力になります。そして、負荷が軽くなるにしたがって、だんだんとスピードが上がってきます。この時には筋肉がコンセントリックな収縮をしているというわけです。

等尺性最大筋力を発揮しているときは速度がゼロの状態なのは前項で説明した通りですが、この時の筋肉はエネルギーを使っていない状態です。力は出しているけれども仕事はしていないという、おかしな状態になっています。力学的な観点だけでいえば、いくらやっても疲れない状態であるということです。といっても、実際は熱という形でエネルギーが作られています。

一方で、コンセントリックの領域では、筋肉が出している力とどのくらいものを動かすかという距離によって仕事の大きさは決まります。同じ力を出して一定の距離を動かす場合、筋肉の仕事は「力×距離」という方式で出すことが可能です。負荷が重くなれば重くなるほど筋肉の仕事は大きくなりますし、負荷が軽くなれば軽くなるほど筋肉の仕事は小さくなります。そして負荷がゼロになって最大速度を出しているときには、速度は大きくても力はゼロのため、仕事としてはゼロということになります。つまり、力を発揮してものを動かさないと筋肉は仕事をしたことにならないわけです。

といってもこれはあくまでも力学的な話であり、トレーニングで壁を押せばもちろん動かないですがその時には筋肉に力が入っています。なのであくまでも「動くものに対して」の話になります。負荷ゼロということについては、前述したように地球上では負荷をゼロにすることは無重力に設定された限られた空間以外は不可能ですので、負荷がゼロで仕事量もゼロというのは地球上で普通に生活している限りはありません(笑)

力のピークは最大筋力の30~35%

では、筋肉の力学的パワーについてですが、これは1秒間当たりに筋肉がどのくらい仕事をするかということになります。最も単純な計算式は「力×距離÷時間」となります。仮に筋肉が出す力がずっと一定だとしましょう。その場合、力は時間に依存せずに一定となるため、パワー=力×速度ということになります。

動作に関わる筋肉が増えてきて、複合関節動作になると話が複雑になってしまうためちょっと横に置いておきましょう。ひじを曲げたり、ひざを伸ばすといった単関節動作においては力と速度の関係は綺麗な双曲線になります。そこからパワー導き出していくと、最大筋力の30~35%くらいの力を出しているときにパワーがピークになるということがわかっています。

これは、私たちの体におけるほとんどの筋肉に共通して言えます。

筋肉の性能を最大限に発揮させるにはどうしたらいい?

つまり、筋肉という力を発揮するモーターを最も効率よく使おうとした場合、「筋肉の性能をフルに発揮させるには?」という観点でいくと、負荷が最大にかかってしまうことは避けなくてはいけません。その上でしっかりと力が出せるのが、最大筋力の30~35%の負荷ということなのです。たとえば、自転車で速く走ろうとした場合、最大筋力の30~35%になるようなギアを選ぶと良いということですね。負荷が大きいギアにすると、一回の回転で長く進むことはできますが、その一回の回転をするための負荷がすごくかかりますよね。つまりはそういうことなのです。

パワーが大きいということは、筋肉が一定時間に多くの仕事をするということです。

発電所をイメージしてください。省エネのために、自転車をこいで自宅の電力を作ろうとした場合(実際にやってみると豆電球がつくくらいなのでやめておきましょう 笑)

ピーク電力を高くしたい場合は、ペダルの重さを、自転車をこぐ人の最大筋力の30~35%になるように工夫すればいいというわけです。ギアを軽くしてスピードを高めると、スピードは上がりますがその分軽くなっているので何回も何回も漕がなくてはいけなくなります。逆にギアを重くすれば力は入りますが、スピードがゆっくりすぎて結局あまり電力にならないのです。大体3分の1くらいの力で行うのが、一番効率がいいのです。

人間という個体を動力として使うと考えた場合、基本的にはモーターと同じです。最大筋力の3分の1の力でものを動かしたりするのが一番いいというわけです。じつはトレーニングも同じで、最大筋力の3分の1くらいの力を出し続けられるようになれば、効率よく筋力を伸ばせるということになります。

 

もしも、あなたがアスリートならば…

この記事を読んでくださる人の中には小さい頃からスポーツを志していて、現在も何らかの競技をされているという人もいるかもしれません。本人が競技をしていなくとも、子どもにスポーツを進めたいという人もいるかもしれません。もしも、アスリートもしくは、これからアスリートを目指すならば「競技中のパワーを高める」ということは非常に重要なことになります。

ここでは競技中のパワーの出し方についてみていきましょう。

ピーク時のパワー発揮能力を高める

筋肉の性能を最大に発揮させるためには、負荷を最大筋力の30~35%に設定すればよいということを説明いたしました。最大筋力のおよそ3分の1のパワーが最も適した力になるのであれば、パワーを高めるためには、最大筋力の3分の1でのトレーニングが必要になると考えることでしょう。もちろんこれは間違っていません。

実際にそういった研究は進められており、最大筋力の3分の1もしくはもう少し軽めの負荷を使ったスピード重視のトレーニングを行うと、ピーク時のパワーが上がってくるという結果が出ています。このトレーニング方法では、最大筋力はそれほど伸びないのですが、瞬間的なパワーを伸ばすためには理にかなっているといえるでしょう。

ではなぜこのような結果になるのか?これは、筋肉そのものの変化ではなく、筋肉を制御するための神経系の特性が変わってくることが要因だと考えられます。たとえば、軽い負荷の下でたくさんの筋繊維を使えるようになる。もしくは、軽い負荷のときに素早い動きができるように、速筋繊維を早めに使えるような仕組みを作り上げるといったように、軽い負荷でのスピードが上がることにより、最大筋力の30~35%くらいの範囲で発揮できるパワーが伸びてくるのだと考えられます。

つまり、ピークのパワー出力を高めようという意味だけであれば、有効なトレーニングだといえます。

筋肉がすでにそれなりに発達していて、素早い動きでのパワーが不足しているという人はこのようなトレーニングを加えていくと良いでしょう。

ピークパワーの高さは必ず結果につながるわけではない

しかし、このような話をするとひとつの誤解が生まれてしまいます。

30~35%の負荷でピークパワーが高くなるのであれば、どんなトレーニングでもその30~35%の負荷をかけて最大のスピードでトレーニングをすることが、一番効率が良いのではないかと考えてしまう人がいるでしょう。

確かに、ピークパワーを大きくすることは、対象物に対して大きなエネルギーを与えることができるため、一番いい方法だと思ってしまうのも仕方がないことでしょう。

しかし、この考え方は「パワーの最大値のみ」を、見た場合になります。

ピークパワーだけを測定する競技があったとしたならば、このトレーニング方法は最も効率的で最も適していると言えると思いますが、現実のスポーツはそうではないですよね。

大きな負荷がかかる状況で大きなパワーを発揮しなければいけないという場合もありますし、疲れがたまってきた体ではだんだんと力が出せなくなっていきます。

このように、スポーツを行う上ではいろいろな状況下で最適なパワー発揮ができるようにならなくてはいけません。あくまでもピークパワーを高めるということは、自動車のエンジンと同じように、筋肉の性質を数値化しその数値に合わせた方法を理論的に考えただけにすぎません。

エンジンのパワーは「馬力」という表現をしますが、これもじつは決められた条件下での数字でしかありません。たとえば280馬力と書いてあれば、最もパワーが出せる条件の時に280馬力がでるということです。ピークパワーだけを見るならば、200馬力のエンジンよりも280馬力のエンジンの方が上ということには間違いありません。

しかし、たとえ200馬力しか出ないエンジンであっても、いろいろな条件下で幅広く200馬力を発揮できるのであれば、長い目で見ると280馬力よりも良い可能性もあります。280馬力のエンジンは、じつは毎分8000回転まで回さないとピークパワーが出ないという可能性もあります。しかし200馬力のエンジンは毎分2000回転で十分なパワーが得られるかもしれません。自動車で言えばカタログにはどのような条件下で測った数値なのかということが書いてありますので、自分の目的に合わせてエンジンを選べばよいでしょう。

どんなシチュエーションでも対応できるパワー発揮能力を鍛えよう

エンジンと筋肉は似ているものだと説明しましたが、前述したエンジンの話を踏まえると、どのようなスポーツを自分が行っているのか、本当に目的に合ったピークパワーを考えてトレーニングをしなくてはいけません。

一番いい条件では高いパワーを発揮できるものの、条件が変わるとあまりパワーがでないということではスポーツの世界は厳しいと考えてください。

たとえば、クーラーが効いている温度も湿度も一定の条件に保たれている場所でしか発揮できないピークパワーでは、もしも同じ競技を屋外で行ったら…そうです、パワーはまったく出せないでしょう。力と速度の関係を全体的に考えたうえで、高いパワーが出る領域を広げていくことが、結果につながるといっても過言ではありません。

重たい負荷がかかった時も、軽い負荷しかかからない時でも、それなりに十分なパワーを出せるようにしておくと、スポーツのさまざまなシチュエーションに対応したパワーを発揮できるようになるでしょう。これは単純に考えても、ピークパワーを高めるよりもまず先にやらなくてはいけないことです。

具体的に言いますと、70%1RM前後の負荷でトレーニングをしていくことで、筋肉は太くなりながら筋力も増していくため、幅広い条件下でのパワー発揮能力が高くなっていきます。スピード、軽い負荷でのピークパワーはあまり変わらないと思っていただいてもいいですが、重い負荷がかかった時のパワーがより強くなります。このように基礎筋力を高めたうえで、軽い負荷を使ったスピードを出すトレーニングを行い、ピークパワーを高めていくという順序をとることで、全体的に大きなパワーを得ることができるのです。

アスリートとしてスポーツを極めていきたいのであれば、このようなプランニングをしっかりとたて、メニューをこなしていくことが重要になります。

 

伸張性領域で起こることを覚えておこう

人間の筋肉には、急激に引っ張られて多くの力が必要になった状況では、神経に抑制がかかるようにできています。

これまで等尺性収縮と短縮性収縮という条件下のお話をしましたが、実際の運動というのはこれらの条件だけでおこるのではなくもう一つ大切な「伸張性収縮」があります。筋肉が力をだしながら、より大きな力で引き延ばされている状態のことです。

ここでは、伸張性収縮の状態で、何が起こるのかを説明いたします。

伸張性収縮の状態は、筋繊維は2倍の力を発揮できる

筋収縮については、1本の筋繊維と、筋肉全体それぞれについて考えていく必要がありますが、まずはわかりやすい筋繊維のことを考えていきましょう。その上で筋肉全体に移ります。

等尺性最大子張力以上の力をかけた場合、筋繊維は力に負けてしまいずるずると引き伸ばされてしまいます。筋繊維は引き伸ばされてしまうのですが、実際に筋繊維が出している力そのものは、外力に比例して大きくなっていくのです。

収縮中の筋肉を外から強引に引っ張ったとすると、筋繊維はものすごく大きな力を出すということですね。具体的には等尺性最大筋力の1.8~2倍もの力を出すことがわかっています。

そしてある程度まではこの状態で保つことができるのですが、ある一線を越えると耐えきれなくなります。この詳しい話は少し長くなってしまうので、また別の機会にいたします。

伸張性収縮が筋肉全体にかかると限界は早くなる

では、次に1本の筋繊維ではなく筋肉全体で考えてみましょう。筋肉は筋繊維の集合体です。基本的には、筋繊維で起きたことと同じことが起こります。

強制的に引っ張られるような条件ならば、筋肉は大きな力を出しつつも、動きにブレーキがかかるような状態で引き伸ばされていきます。やはり、筋肉も等尺性最大筋力のおよそ2倍のところまで力が出せると考えられています。

しかし、同じ条件でいざ実験を行ってみるとそこまでの強い力を発揮することはできません。これは、2倍もの力を出した場合筋肉が大きなダメージを受けたり、腱や靭帯がきれてしまったりという事故になりかねないからです。そのため、筋肉が急激に引っ張られて大きな力を出さなければいけない状況になった場合、体をセーブするために神経に抑制がかかるようになっているのです。

筋肉では、動員されている筋繊維の数を減らそうとする動きになります。すると、最大筋力のレベルが通常よりも下がってしまいますので、筋繊維で考えた場合の限界の一定ラインよりも早く耐えきれなくなるということです。

実際に何かを動かそうとすると筋繊維は多くのものが動員されるのが当たり前で、1本だけ動かそうとするのは人間の体の構造上無理なのであくまでも理論的な話になってしまいますが。

ちなみに、ひじの屈筋で実験をしたところ、平均で1.5倍程度という研究結果があります。等尺性最大筋力の50%増し程度のところで限界になってしまうという人が多いのです。とはいっても、この数値にはかなり個人差があり、早くギブアップする人と、ぎりぎりまで頑張れる人はいます。これは、筋肉の活動に対する抑制が早く起こるタイプか、遅く起こるタイプかによるものでしょう。もちろんその本人のどこまで限界に耐えるかという気持ちの問題もあると思いますが、研究でケガをするまで行うというのはあまりないですからね。

神経へのリミッターのかかり方が遅い人は注意が必要

筋肉には、伸縮性収縮のときに大きな力を発揮できる特性があるため、ウエイトトレーニングで持ち上げることができないバーベルでも、ブレーキをかけながら下ろすということができます。

たとえば、ひじの屈曲のような単関節動作においては、最大負荷の1.3~1.4倍程度までは誰でもゆっくりおろすことが可能です。

しかし、いろいろな筋肉が関わってくる複雑な種目となると、なかなかこのようにはいきません。ベンチプレスのような複合関節動作では、1.3倍でもかなり厳しく、1.2倍でようやくといったところです。脚の筋肉の場合は、腕よりもさらに早くセーブがかかるようになっているため、ひざの伸筋などでは、1.1倍まで出せればすごいという数値になります。

これは、脚には大きな筋肉があるからなのですが、大きな筋肉が限界を超えるような大きな力を出してしまうと筋肉が壊れる危険性が高いため筋肉の働きそのものにセーブがかかるような仕組みになっているのだと考えられます。正確なメカニズムはまだ研究が進められている最中ですが、これはおそらく神経の反応として起こるのではないかといわれています。ある一定以上の力を発揮させたまま筋肉を使い続けると、ケガにつながる恐れが大きいため、セーブをする一定ラインが、安全面から早めにリミッターがかかるように低く設定されているのだと考えられます。

このように、パーツによってリミッターのかかりが速い筋肉と遅い筋肉が体の中にはあります。また、同じ筋肉でもリミッターがかかりやすい動作とかかりにくい動作もあるのです。さらには、リミッターのかかり方は個人差が大きいため、一概にこのくらいでリミッターがかかり始めるということをいうのは難しく、その人なりの動き方を見ていくしかありません。

ただ一つだけ…。極端に頑張れる(耐えてしまう)人は、リミッターがかかりにくい人であるといえます。

こういった人の場合、腱断裂などのケガを引き起こしてしまう危険性が高いかもしれませんので、注意が必要です。あまりに無茶な耐え方をしてはいけませんよ。

負荷をゆっくり持ち上げるときには筋肉の中でどのようなことが起きている?

「過大な負荷」という単語を効くと、力を出している筋肉をさらに無理やり引っ張ることやとてつもなく重いバーベルをゆっくりと下ろすといったような状態を思い浮かべるひとも少なくないでしょう。

しかし、筋繊維レベルで考えると、通常のダンベルトレーニングやバーベルトレーニングで、負荷を上げたり下ろしたりしているときにも常に同じことが起こっているのです。

等尺性最大筋力よりも軽い負荷であれば、筋肉が短縮性収縮をすることによりその負荷が持ち上がります。

しかも、負荷が軽いので、持ち上げる速度は自分で簡単にコントロールすることが可能です。

たとえば、等尺性最大筋力に対して50%程度の重さのバーベルならば、100%の力を使うとかなりの速さで持ち上げられるでしょう。

では、この50%の重さのバーベルを「あえて」ゆっくり持ち上げようとした場合は、体の中でどのようなことが起こっているのでしょうか?

じつは、筋繊維の動員の仕方が変わっていきます。1本1本の筋繊維が力を抜くのではなく、使用する筋繊維の数を減らすことにより、発揮される力をコントロールしているのです。動員する筋繊維を100%から70%に減らすことで、筋繊維1本にかかる相対的な荷重はおおきくなるため、その分ゆっくりしたスピードで負荷が上がっていくということになります。この時に1本1本の筋繊維にかかる負荷は、均等に配分されていると考えられています。

筋肉全体と筋繊維単位では状況は異なる

前項では負荷を持ち上げるときの話をしましたが、基本的には負荷を下ろす時も同じことが起こっています。等尺性最大筋力の50%の負荷に対して100%の筋力を使うと下ろすのではなく持ち上がってしまいます。

もちろん負荷を下ろすという意思があるので、持ち上がることは実際にはありえないのですが、もしも意識がない状態で体が動かせるとしたならば、理論的には持ち上がってしまうことになるのです。そうならないように、下ろしたいスピードに合わせて筋繊維を間引きます。50%の筋繊維を使えば、負荷の動きが止まり、それよりも少ない筋繊維になると負荷が下がるというわけです。

早く下ろすよりもゆっくり下ろす方がより大きな力が必要になります。

同じ負荷ならば、動員された筋繊維の数が少ないほど下ろすスピードは速くなり、筋繊維の数が多くなれば多くなるほどゆっくりおろせるということですね。

脳で下ろすスピードが決められたところで自動的に筋繊維の間引きが始まるというわけです。

負荷を下ろす時に30%しか筋繊維を使っていない場合、筋肉全体にとっては大した運動にはなりませんが、実際に負荷を動かしている30%の筋繊維はもっている力をフルに使っているため、過大な負荷になるのです。

働いている筋繊維にとって、負荷を下ろすスピードが速いか遅いのかはあまり関係ありません。負荷が軽いか重いかも同じことです。

負荷が軽くなれば、筋肉全体としては楽になりますが、ブレーキをかけながら必死に働いている筋繊維には最大筋力を超える負荷がかかり無理やり伸ばされている状態です。

普段意識することがない体の中の話になりますが、筋繊維単位で見た場合と筋肉全体で見た場合とではずいぶん変わるということを知っておきましょう。

 

筋肉全体が活動していたとしても、休んでいる筋繊維はある

前項で、筋繊維をすべて動員するのではなく30%ほどで使っている場合の話をしましたが、30%使っているということは残りの70%の筋繊維は、働いていないということになります。休んでいるときの筋繊維の力の発揮はゼロです。

筋肉全体は活動していても、その中にある1本1本の筋繊維の活動レベルで見てみると0なのか1なのかといったようなシステムになっています。

たとえば筋肉を運動会の綱引きに置き換えて考えてみましょう。Aチーム50人とBチーム50人が力を出し合って、どちらにも動かない拮抗した状態は等尺性収縮といえます(AチームもBチームも、全員が同じ力を発揮すると仮定した場合ですが)。

しかし、Aチームが40人に減ってしまった場合は、Bチームは当然勝ちますよね。

このときのBチームが短縮性収縮ということです。40人になってしまったAチームは、残りの人数で頑張っているものの、Bチームに引っ張られてしまいます。

さらに人数が30人、20人と減ってしまった場合、ひとりひとりの出す力は全く同じでも、もっと早くBチームに引っ張られてしまいますよね。

これが筋肉の中で行われていると考えてください。

上り坂よりも下り坂のほうが楽なのにもかかわらず筋肉痛が起きやすいというのも、このメカニズムが関係しています。

坂を下るという程度の負荷は筋肉全体にとってはそれほど大きいものではありません。

しかし、筋繊維が間引かれた状態での伸張性収縮をくりかえしているため、動員されている一部の筋繊維にとってはかなり大きな負荷がかかっていますのでその分ダメージも大きくなるというわけです。

現在の研究では、間引かれる筋繊維はどのような基準で選ばれて、どのように使い分けられているのかはまだわかっていません。

それらを休ませて別の筋繊維にバトンタッチするという仕組みも考えられますが、まだまだ研究が進んでいかないと実際のところは残念ながら未知であるということです。これからの研究でもっと詳しくわかってくると思いますが、楽しみですね!

 

まとめ

今回は、筋肉の仕組みについて詳しく見ていきましたがちょっと難しい話になってしまいました。筋肉というのは、手足だけではなく全身に広がっているものです。これらひとつひとつを細かく100%鍛えていくのはなかなか大変です。

スポーツを行うアスリートも、とくに運動を行っていない一般の人も、筋肉の仕組みを考え一番効率のいい鍛え方、動かし方をしていきましょう。

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http://bodyke-live.com/wp-content/uploads/2018/08/Fitness-e1534665638229-1024x641.jpghttp://bodyke-live.com/wp-content/uploads/2018/08/Fitness-e1534665638229-150x150.jpgBodykeLIVE体の仕組みこんにちはパーソナルトレーナーの渡辺開人です。スポーツやトレーニングをするときだけではなく、日常生活を送るうえでも筋肉は必要になります。正しくは生きていくだけで筋肉は必要です。もしも筋肉がなかったならば、起き上がることも歩くこともできません。さらには、内臓にも支障が出ます。そんな大切な筋肉ですが、実際にどのようなものなのかを学ぶ機会というのはあまりありません。学生時代、スポーツ学科に通っていた人ならともかく、一般人で学問的に筋肉に触れるということはそうそうないでしょう。今回は、そんな身近にあっても実際はよく知らない筋肉について細かく学んでみましょう。筋肉の仕組みはモーターと同じ筋肉の仕組みは、基本的に車のモーターと同じだと考えていただければと思います。力は強いけれどもスピードが出ないというタイプの筋肉もあれば、スピードは出るけれども力はないというタイプもあります。ここでは筋肉の特性を見ていきましょう。スポーツをする上では、力よりもスピードが重要以前の記事で、筋肉の「静的特性」についてみていきましたが、これは力を発揮する仕組みについて理解すること、データを集める際に便利な指針になるため、研究の分野でよく利用されてきました。しかし、実際の運動においては、止まったまま大きな力を発揮するという機会はなかなかないと思います。何かしら動く時に大きな力が必要になりますよね。スポーツを行う上で、質や強さを考える場合、どれだけ力を発揮できるかというよりも、どれだけスピードを出せるかということが問題になることも多いでしょう。そこで、筋肉が収縮しているときにどういう速度を出せているのか、つまり「動的特性」が重要になるということです。といっても、筋肉の中身を見ながらというわけにもいきませんので、筋肉の代わりにモーターを思い浮かべてみてください。模型の自動車を走らせるときや、自動車の中のファンを回すための動力がほしいときに、それぞれの用途にあった動的特性をもつモーターを使用しますよね。モーターの動的特性とは、「回転力(力)」と「回転速度(速度)」の関係です。モーターのカタログなどを見るとどちらも数値で表されています。モーターにはさまざまなタイプがあり、力は強いけれども速度が出ないというものもあれば、速く回るけれども力は弱いというものもあります。マニュアルの車に乗ったことがある人ならばわかるかもしれませんが、1速は大きな力を発揮しますがスピードは出ないですよね。そのかわり、2速3速とギアを上げていけば、力は減っていくもののスピードが出るようになります。つまりはこういうことなのです。モーターの力や速度関係を調べるのは非常に簡単で、電気系統がわからなくとも誰にでもできます。モーターを電源につないで回せばいいのです。その上で回転軸に対して抵抗をかけていったときに、回転速度がどのように変わるのかを見ればいいのです。抵抗が増えていけば徐々にスピードは落ちていきます。さらに抵抗を増やすとやがて止まってしまいますが、この止まったところがこのモーターの最大出力ということになります。これは筋肉でいうところの「等尺性最大筋力」にあたります。その一方で、モーターが最も早く回るのはどんな時かというと、何にも負荷がかかっていない時です。私たち人間も重いものを持って走った時と、何も持たないで走った時では何も持たない時に走った方が断然早いですよね。これと同じことです。ちなみに、ちょっと話はズレてしまいますが、もしも一般的な直流モーターを購入することがある場合、自分の求めている力がそのモーターの最大出力の半分程度、もしくは求めているスピードが最大スピードの半分程度という数値のものを選べばよいでしょう。求めている力が最大出力あるいは最大スピードギリギリの場合は、つねにそのモーターに最大の負荷をかけることになりますので、モーターの寿命が速くなってしまうと考えてください。速度に関する筋収縮時の力体の話をしているのに、なぜモーターの話をしたのだ⁈と思う人もいることでしょう(笑)モーターの話を書く際の最初の方に少し書きましたが、筋肉はモーターと同じように考えられるからです。力は強いけれどもスピードが出ないというタイプもあれば、スピードはあるけれども力は出ないというタイプもあります。自分が求めるパフォーマンスに対して、どのように筋肉を作っていくかと考えた時に、単純に力だけではなく、速度も視野に入れてアプローチしていくことが必要になります。そこでモーターと同じように筋肉の力関係をみていきましょう。筋肉にかける負荷を大きくしていったときに、筋肉が出せる速度がどのように変わっていくかということを上腕二頭筋(ひじの屈筋)で調べる研究は今まで頻繁に行われてきました。いろいろなタイプの負荷をかけて、おもいっきりひじ屈曲を行ったときの速度を測定する研究です。かける負荷をどんどん重くしていくと、屈曲するスピードは徐々に遅くなり、やがて動かせなくなってしまいます。これは想像しやすいと思いますが、軽いものは速く動かせるけれども、重たいものは速くは動かせないですよね。トレーニングで考えると、バーベルやダンベルを重くしていくと、持ち上げるスピードが遅くなり、やがて持ち上げることができなくなってしまうでしょう。研究でも同じような結果が出ます。双曲線状の関係はどんな筋肉にも共通しているスピードの落ち方としては、負荷が軽いところの方が険しく、だんだんとなだらかになっていきます。完全に止まってしまったところが、等尺性最大筋力ということになります。その一方で、負荷がゼロの状態で筋力が収縮できるスピードのことを、無負荷最大短縮速度といいます。とはいっても、地球上では重力がありますので、負荷ゼロを体験するというのは研究機関にでも行かないかぎり難しいことです。じつは力の速度関係が双曲線状になるという関係は、あらゆる筋肉に共通した特性なのです。貝・昆虫・カエル・ヒト…などなど、動物種の筋肉はすべて同じです。これは、筋収縮の原動力となる「ミオシン」というたんぱく質で調べても同じ特性を示すことがわかっています。この特性をどのように解釈し、技術の練習やトレーニングにどのように生かしていくか。競技力アップという面で考えた時に、かなり重要な意味を持つのではないでしょうか。 最大筋力の30~35%の負荷が最も効果的である前項で、筋肉の動的特性としての力と速度関係について紹介しましたが、こちらではその関係から導き出される力学的パワーについて説明していきましょう。物が動かないと筋肉は仕事をしたことにならない実際のパフォーマンスにおいて、力学的パワーというものが非常に重要な意味をもっていきます。物を持ち上げたり動かしたりするという行為は、筋肉の働きとしては「アイソメトリック」から「コンセントリック」の領域になります。力を出していてもギリギリ物(負荷)が持ち上がらないところが等尺性最大筋力に等しい力になります。そして、負荷が軽くなるにしたがって、だんだんとスピードが上がってきます。この時には筋肉がコンセントリックな収縮をしているというわけです。等尺性最大筋力を発揮しているときは速度がゼロの状態なのは前項で説明した通りですが、この時の筋肉はエネルギーを使っていない状態です。力は出しているけれども仕事はしていないという、おかしな状態になっています。力学的な観点だけでいえば、いくらやっても疲れない状態であるということです。といっても、実際は熱という形でエネルギーが作られています。一方で、コンセントリックの領域では、筋肉が出している力とどのくらいものを動かすかという距離によって仕事の大きさは決まります。同じ力を出して一定の距離を動かす場合、筋肉の仕事は「力×距離」という方式で出すことが可能です。負荷が重くなれば重くなるほど筋肉の仕事は大きくなりますし、負荷が軽くなれば軽くなるほど筋肉の仕事は小さくなります。そして負荷がゼロになって最大速度を出しているときには、速度は大きくても力はゼロのため、仕事としてはゼロということになります。つまり、力を発揮してものを動かさないと筋肉は仕事をしたことにならないわけです。といってもこれはあくまでも力学的な話であり、トレーニングで壁を押せばもちろん動かないですがその時には筋肉に力が入っています。なのであくまでも「動くものに対して」の話になります。負荷ゼロということについては、前述したように地球上では負荷をゼロにすることは無重力に設定された限られた空間以外は不可能ですので、負荷がゼロで仕事量もゼロというのは地球上で普通に生活している限りはありません(笑)力のピークは最大筋力の30~35%では、筋肉の力学的パワーについてですが、これは1秒間当たりに筋肉がどのくらい仕事をするかということになります。最も単純な計算式は「力×距離÷時間」となります。仮に筋肉が出す力がずっと一定だとしましょう。その場合、力は時間に依存せずに一定となるため、パワー=力×速度ということになります。動作に関わる筋肉が増えてきて、複合関節動作になると話が複雑になってしまうためちょっと横に置いておきましょう。ひじを曲げたり、ひざを伸ばすといった単関節動作においては力と速度の関係は綺麗な双曲線になります。そこからパワー導き出していくと、最大筋力の30~35%くらいの力を出しているときにパワーがピークになるということがわかっています。これは、私たちの体におけるほとんどの筋肉に共通して言えます。筋肉の性能を最大限に発揮させるにはどうしたらいい?つまり、筋肉という力を発揮するモーターを最も効率よく使おうとした場合、「筋肉の性能をフルに発揮させるには?」という観点でいくと、負荷が最大にかかってしまうことは避けなくてはいけません。その上でしっかりと力が出せるのが、最大筋力の30~35%の負荷ということなのです。たとえば、自転車で速く走ろうとした場合、最大筋力の30~35%になるようなギアを選ぶと良いということですね。負荷が大きいギアにすると、一回の回転で長く進むことはできますが、その一回の回転をするための負荷がすごくかかりますよね。つまりはそういうことなのです。パワーが大きいということは、筋肉が一定時間に多くの仕事をするということです。発電所をイメージしてください。省エネのために、自転車をこいで自宅の電力を作ろうとした場合(実際にやってみると豆電球がつくくらいなのでやめておきましょう 笑)ピーク電力を高くしたい場合は、ペダルの重さを、自転車をこぐ人の最大筋力の30~35%になるように工夫すればいいというわけです。ギアを軽くしてスピードを高めると、スピードは上がりますがその分軽くなっているので何回も何回も漕がなくてはいけなくなります。逆にギアを重くすれば力は入りますが、スピードがゆっくりすぎて結局あまり電力にならないのです。大体3分の1くらいの力で行うのが、一番効率がいいのです。人間という個体を動力として使うと考えた場合、基本的にはモーターと同じです。最大筋力の3分の1の力でものを動かしたりするのが一番いいというわけです。じつはトレーニングも同じで、最大筋力の3分の1くらいの力を出し続けられるようになれば、効率よく筋力を伸ばせるということになります。 もしも、あなたがアスリートならば…この記事を読んでくださる人の中には小さい頃からスポーツを志していて、現在も何らかの競技をされているという人もいるかもしれません。本人が競技をしていなくとも、子どもにスポーツを進めたいという人もいるかもしれません。もしも、アスリートもしくは、これからアスリートを目指すならば「競技中のパワーを高める」ということは非常に重要なことになります。ここでは競技中のパワーの出し方についてみていきましょう。ピーク時のパワー発揮能力を高める筋肉の性能を最大に発揮させるためには、負荷を最大筋力の30~35%に設定すればよいということを説明いたしました。最大筋力のおよそ3分の1のパワーが最も適した力になるのであれば、パワーを高めるためには、最大筋力の3分の1でのトレーニングが必要になると考えることでしょう。もちろんこれは間違っていません。実際にそういった研究は進められており、最大筋力の3分の1もしくはもう少し軽めの負荷を使ったスピード重視のトレーニングを行うと、ピーク時のパワーが上がってくるという結果が出ています。このトレーニング方法では、最大筋力はそれほど伸びないのですが、瞬間的なパワーを伸ばすためには理にかなっているといえるでしょう。ではなぜこのような結果になるのか?これは、筋肉そのものの変化ではなく、筋肉を制御するための神経系の特性が変わってくることが要因だと考えられます。たとえば、軽い負荷の下でたくさんの筋繊維を使えるようになる。もしくは、軽い負荷のときに素早い動きができるように、速筋繊維を早めに使えるような仕組みを作り上げるといったように、軽い負荷でのスピードが上がることにより、最大筋力の30~35%くらいの範囲で発揮できるパワーが伸びてくるのだと考えられます。つまり、ピークのパワー出力を高めようという意味だけであれば、有効なトレーニングだといえます。筋肉がすでにそれなりに発達していて、素早い動きでのパワーが不足しているという人はこのようなトレーニングを加えていくと良いでしょう。ピークパワーの高さは必ず結果につながるわけではないしかし、このような話をするとひとつの誤解が生まれてしまいます。30~35%の負荷でピークパワーが高くなるのであれば、どんなトレーニングでもその30~35%の負荷をかけて最大のスピードでトレーニングをすることが、一番効率が良いのではないかと考えてしまう人がいるでしょう。確かに、ピークパワーを大きくすることは、対象物に対して大きなエネルギーを与えることができるため、一番いい方法だと思ってしまうのも仕方がないことでしょう。しかし、この考え方は「パワーの最大値のみ」を、見た場合になります。ピークパワーだけを測定する競技があったとしたならば、このトレーニング方法は最も効率的で最も適していると言えると思いますが、現実のスポーツはそうではないですよね。大きな負荷がかかる状況で大きなパワーを発揮しなければいけないという場合もありますし、疲れがたまってきた体ではだんだんと力が出せなくなっていきます。このように、スポーツを行う上ではいろいろな状況下で最適なパワー発揮ができるようにならなくてはいけません。あくまでもピークパワーを高めるということは、自動車のエンジンと同じように、筋肉の性質を数値化しその数値に合わせた方法を理論的に考えただけにすぎません。エンジンのパワーは「馬力」という表現をしますが、これもじつは決められた条件下での数字でしかありません。たとえば280馬力と書いてあれば、最もパワーが出せる条件の時に280馬力がでるということです。ピークパワーだけを見るならば、200馬力のエンジンよりも280馬力のエンジンの方が上ということには間違いありません。しかし、たとえ200馬力しか出ないエンジンであっても、いろいろな条件下で幅広く200馬力を発揮できるのであれば、長い目で見ると280馬力よりも良い可能性もあります。280馬力のエンジンは、じつは毎分8000回転まで回さないとピークパワーが出ないという可能性もあります。しかし200馬力のエンジンは毎分2000回転で十分なパワーが得られるかもしれません。自動車で言えばカタログにはどのような条件下で測った数値なのかということが書いてありますので、自分の目的に合わせてエンジンを選べばよいでしょう。どんなシチュエーションでも対応できるパワー発揮能力を鍛えようエンジンと筋肉は似ているものだと説明しましたが、前述したエンジンの話を踏まえると、どのようなスポーツを自分が行っているのか、本当に目的に合ったピークパワーを考えてトレーニングをしなくてはいけません。一番いい条件では高いパワーを発揮できるものの、条件が変わるとあまりパワーがでないということではスポーツの世界は厳しいと考えてください。たとえば、クーラーが効いている温度も湿度も一定の条件に保たれている場所でしか発揮できないピークパワーでは、もしも同じ競技を屋外で行ったら…そうです、パワーはまったく出せないでしょう。力と速度の関係を全体的に考えたうえで、高いパワーが出る領域を広げていくことが、結果につながるといっても過言ではありません。重たい負荷がかかった時も、軽い負荷しかかからない時でも、それなりに十分なパワーを出せるようにしておくと、スポーツのさまざまなシチュエーションに対応したパワーを発揮できるようになるでしょう。これは単純に考えても、ピークパワーを高めるよりもまず先にやらなくてはいけないことです。具体的に言いますと、70%1RM前後の負荷でトレーニングをしていくことで、筋肉は太くなりながら筋力も増していくため、幅広い条件下でのパワー発揮能力が高くなっていきます。スピード、軽い負荷でのピークパワーはあまり変わらないと思っていただいてもいいですが、重い負荷がかかった時のパワーがより強くなります。このように基礎筋力を高めたうえで、軽い負荷を使ったスピードを出すトレーニングを行い、ピークパワーを高めていくという順序をとることで、全体的に大きなパワーを得ることができるのです。アスリートとしてスポーツを極めていきたいのであれば、このようなプランニングをしっかりとたて、メニューをこなしていくことが重要になります。 伸張性領域で起こることを覚えておこう人間の筋肉には、急激に引っ張られて多くの力が必要になった状況では、神経に抑制がかかるようにできています。これまで等尺性収縮と短縮性収縮という条件下のお話をしましたが、実際の運動というのはこれらの条件だけでおこるのではなくもう一つ大切な「伸張性収縮」があります。筋肉が力をだしながら、より大きな力で引き延ばされている状態のことです。ここでは、伸張性収縮の状態で、何が起こるのかを説明いたします。伸張性収縮の状態は、筋繊維は2倍の力を発揮できる筋収縮については、1本の筋繊維と、筋肉全体それぞれについて考えていく必要がありますが、まずはわかりやすい筋繊維のことを考えていきましょう。その上で筋肉全体に移ります。等尺性最大子張力以上の力をかけた場合、筋繊維は力に負けてしまいずるずると引き伸ばされてしまいます。筋繊維は引き伸ばされてしまうのですが、実際に筋繊維が出している力そのものは、外力に比例して大きくなっていくのです。収縮中の筋肉を外から強引に引っ張ったとすると、筋繊維はものすごく大きな力を出すということですね。具体的には等尺性最大筋力の1.8~2倍もの力を出すことがわかっています。そしてある程度まではこの状態で保つことができるのですが、ある一線を越えると耐えきれなくなります。この詳しい話は少し長くなってしまうので、また別の機会にいたします。伸張性収縮が筋肉全体にかかると限界は早くなるでは、次に1本の筋繊維ではなく筋肉全体で考えてみましょう。筋肉は筋繊維の集合体です。基本的には、筋繊維で起きたことと同じことが起こります。強制的に引っ張られるような条件ならば、筋肉は大きな力を出しつつも、動きにブレーキがかかるような状態で引き伸ばされていきます。やはり、筋肉も等尺性最大筋力のおよそ2倍のところまで力が出せると考えられています。しかし、同じ条件でいざ実験を行ってみるとそこまでの強い力を発揮することはできません。これは、2倍もの力を出した場合筋肉が大きなダメージを受けたり、腱や靭帯がきれてしまったりという事故になりかねないからです。そのため、筋肉が急激に引っ張られて大きな力を出さなければいけない状況になった場合、体をセーブするために神経に抑制がかかるようになっているのです。筋肉では、動員されている筋繊維の数を減らそうとする動きになります。すると、最大筋力のレベルが通常よりも下がってしまいますので、筋繊維で考えた場合の限界の一定ラインよりも早く耐えきれなくなるということです。実際に何かを動かそうとすると筋繊維は多くのものが動員されるのが当たり前で、1本だけ動かそうとするのは人間の体の構造上無理なのであくまでも理論的な話になってしまいますが。ちなみに、ひじの屈筋で実験をしたところ、平均で1.5倍程度という研究結果があります。等尺性最大筋力の50%増し程度のところで限界になってしまうという人が多いのです。とはいっても、この数値にはかなり個人差があり、早くギブアップする人と、ぎりぎりまで頑張れる人はいます。これは、筋肉の活動に対する抑制が早く起こるタイプか、遅く起こるタイプかによるものでしょう。もちろんその本人のどこまで限界に耐えるかという気持ちの問題もあると思いますが、研究でケガをするまで行うというのはあまりないですからね。神経へのリミッターのかかり方が遅い人は注意が必要筋肉には、伸縮性収縮のときに大きな力を発揮できる特性があるため、ウエイトトレーニングで持ち上げることができないバーベルでも、ブレーキをかけながら下ろすということができます。たとえば、ひじの屈曲のような単関節動作においては、最大負荷の1.3~1.4倍程度までは誰でもゆっくりおろすことが可能です。しかし、いろいろな筋肉が関わってくる複雑な種目となると、なかなかこのようにはいきません。ベンチプレスのような複合関節動作では、1.3倍でもかなり厳しく、1.2倍でようやくといったところです。脚の筋肉の場合は、腕よりもさらに早くセーブがかかるようになっているため、ひざの伸筋などでは、1.1倍まで出せればすごいという数値になります。これは、脚には大きな筋肉があるからなのですが、大きな筋肉が限界を超えるような大きな力を出してしまうと筋肉が壊れる危険性が高いため筋肉の働きそのものにセーブがかかるような仕組みになっているのだと考えられます。正確なメカニズムはまだ研究が進められている最中ですが、これはおそらく神経の反応として起こるのではないかといわれています。ある一定以上の力を発揮させたまま筋肉を使い続けると、ケガにつながる恐れが大きいため、セーブをする一定ラインが、安全面から早めにリミッターがかかるように低く設定されているのだと考えられます。このように、パーツによってリミッターのかかりが速い筋肉と遅い筋肉が体の中にはあります。また、同じ筋肉でもリミッターがかかりやすい動作とかかりにくい動作もあるのです。さらには、リミッターのかかり方は個人差が大きいため、一概にこのくらいでリミッターがかかり始めるということをいうのは難しく、その人なりの動き方を見ていくしかありません。ただ一つだけ…。極端に頑張れる(耐えてしまう)人は、リミッターがかかりにくい人であるといえます。こういった人の場合、腱断裂などのケガを引き起こしてしまう危険性が高いかもしれませんので、注意が必要です。あまりに無茶な耐え方をしてはいけませんよ。負荷をゆっくり持ち上げるときには筋肉の中でどのようなことが起きている?「過大な負荷」という単語を効くと、力を出している筋肉をさらに無理やり引っ張ることやとてつもなく重いバーベルをゆっくりと下ろすといったような状態を思い浮かべるひとも少なくないでしょう。しかし、筋繊維レベルで考えると、通常のダンベルトレーニングやバーベルトレーニングで、負荷を上げたり下ろしたりしているときにも常に同じことが起こっているのです。等尺性最大筋力よりも軽い負荷であれば、筋肉が短縮性収縮をすることによりその負荷が持ち上がります。しかも、負荷が軽いので、持ち上げる速度は自分で簡単にコントロールすることが可能です。たとえば、等尺性最大筋力に対して50%程度の重さのバーベルならば、100%の力を使うとかなりの速さで持ち上げられるでしょう。では、この50%の重さのバーベルを「あえて」ゆっくり持ち上げようとした場合は、体の中でどのようなことが起こっているのでしょうか?じつは、筋繊維の動員の仕方が変わっていきます。1本1本の筋繊維が力を抜くのではなく、使用する筋繊維の数を減らすことにより、発揮される力をコントロールしているのです。動員する筋繊維を100%から70%に減らすことで、筋繊維1本にかかる相対的な荷重はおおきくなるため、その分ゆっくりしたスピードで負荷が上がっていくということになります。この時に1本1本の筋繊維にかかる負荷は、均等に配分されていると考えられています。筋肉全体と筋繊維単位では状況は異なる前項では負荷を持ち上げるときの話をしましたが、基本的には負荷を下ろす時も同じことが起こっています。等尺性最大筋力の50%の負荷に対して100%の筋力を使うと下ろすのではなく持ち上がってしまいます。もちろん負荷を下ろすという意思があるので、持ち上がることは実際にはありえないのですが、もしも意識がない状態で体が動かせるとしたならば、理論的には持ち上がってしまうことになるのです。そうならないように、下ろしたいスピードに合わせて筋繊維を間引きます。50%の筋繊維を使えば、負荷の動きが止まり、それよりも少ない筋繊維になると負荷が下がるというわけです。早く下ろすよりもゆっくり下ろす方がより大きな力が必要になります。同じ負荷ならば、動員された筋繊維の数が少ないほど下ろすスピードは速くなり、筋繊維の数が多くなれば多くなるほどゆっくりおろせるということですね。脳で下ろすスピードが決められたところで自動的に筋繊維の間引きが始まるというわけです。負荷を下ろす時に30%しか筋繊維を使っていない場合、筋肉全体にとっては大した運動にはなりませんが、実際に負荷を動かしている30%の筋繊維はもっている力をフルに使っているため、過大な負荷になるのです。働いている筋繊維にとって、負荷を下ろすスピードが速いか遅いのかはあまり関係ありません。負荷が軽いか重いかも同じことです。負荷が軽くなれば、筋肉全体としては楽になりますが、ブレーキをかけながら必死に働いている筋繊維には最大筋力を超える負荷がかかり無理やり伸ばされている状態です。普段意識することがない体の中の話になりますが、筋繊維単位で見た場合と筋肉全体で見た場合とではずいぶん変わるということを知っておきましょう。 筋肉全体が活動していたとしても、休んでいる筋繊維はある前項で、筋繊維をすべて動員するのではなく30%ほどで使っている場合の話をしましたが、30%使っているということは残りの70%の筋繊維は、働いていないということになります。休んでいるときの筋繊維の力の発揮はゼロです。筋肉全体は活動していても、その中にある1本1本の筋繊維の活動レベルで見てみると0なのか1なのかといったようなシステムになっています。たとえば筋肉を運動会の綱引きに置き換えて考えてみましょう。Aチーム50人とBチーム50人が力を出し合って、どちらにも動かない拮抗した状態は等尺性収縮といえます(AチームもBチームも、全員が同じ力を発揮すると仮定した場合ですが)。しかし、Aチームが40人に減ってしまった場合は、Bチームは当然勝ちますよね。このときのBチームが短縮性収縮ということです。40人になってしまったAチームは、残りの人数で頑張っているものの、Bチームに引っ張られてしまいます。さらに人数が30人、20人と減ってしまった場合、ひとりひとりの出す力は全く同じでも、もっと早くBチームに引っ張られてしまいますよね。これが筋肉の中で行われていると考えてください。上り坂よりも下り坂のほうが楽なのにもかかわらず筋肉痛が起きやすいというのも、このメカニズムが関係しています。坂を下るという程度の負荷は筋肉全体にとってはそれほど大きいものではありません。しかし、筋繊維が間引かれた状態での伸張性収縮をくりかえしているため、動員されている一部の筋繊維にとってはかなり大きな負荷がかかっていますのでその分ダメージも大きくなるというわけです。現在の研究では、間引かれる筋繊維はどのような基準で選ばれて、どのように使い分けられているのかはまだわかっていません。それらを休ませて別の筋繊維にバトンタッチするという仕組みも考えられますが、まだまだ研究が進んでいかないと実際のところは残念ながら未知であるということです。これからの研究でもっと詳しくわかってくると思いますが、楽しみですね! まとめ今回は、筋肉の仕組みについて詳しく見ていきましたがちょっと難しい話になってしまいました。筋肉というのは、手足だけではなく全身に広がっているものです。これらひとつひとつを細かく100%鍛えていくのはなかなか大変です。スポーツを行うアスリートも、とくに運動を行っていない一般の人も、筋肉の仕組みを考え一番効率のいい鍛え方、動かし方をしていきましょう。ボディークライブは、プロのトレーナーが執筆・監修した確かな情報だけをお届けします。ダイエットに悩んでいる方、ボディメイクが好きな方、健康な生活を送りたい方必見!