ダンベルを上げる女性

こんにちはパーソナルトレーナーの渡辺です。

私たちの体には筋肉が全身にありますが、もしもこの筋肉がなかったならば体を動かすどころか起き上がることもできません。体を動かすのには筋肉が収縮を繰り返すことが必要です。そもそも筋収縮の定義とはなんでしょうか?これは、「筋肉が筋肉自体の中心方向に向かって能動的に力を発揮する」ということです。そんな筋収縮には4つの形態が存在し、トレーニングの種類やどのような運動を行うかによって、それぞれ使われる筋収縮は異なります。

例えばトレーニングの現場で最も使われているのは「等張力性収縮」です。これは筋肉が出す力を一定にする方法です。また、「短縮性収縮」と「伸張性収縮」とでは使われている筋線維の数が違います。見かけでは似たような力を出していても、実は中身は違っている。今回はそんな筋肉の中身、収縮についてご紹介していきましょう。

筋収縮はどんな仕組み?

さて、「筋収縮」というものはどういうものなのでしょう。まずその単語について少し説明していきましょう。

「収縮」という言葉の本来の意味としては物理的に小さく短くなるということのため、一時期「伸張性収縮で収縮という単語を使用するのはおかしいのではないか」という議論がありました。

伸張性収縮とは、筋肉がブレーキとしての力を発揮した状態のまま引き伸ばされているものです。

これは、バーベルをゆっくりと下ろしている状態などが当てはまります。

この場合、筋肉そのものは収縮しているのではなく、伸張しているのです。

それなのに収縮という単語を使うのはおかしいのでは?ということです。

後になってその議論は、筋収縮という言葉を使わずに「筋活動」にしようという話に発展していきました。

そのため、今でも運動生理学の分野で「筋収縮」というと筋肉が短くなる状態を指す場合が多く、筋肉が力を発揮している状態そのものを「筋活動」と総称するケースが多いのです。

しかし、筋活動と言ってしまうと筋肉が行う力学的な働き以外に、熱を出すことなども含まれてしまうため、用語としては逆に分かりにくくなってしまうという反対意見もありました。

ちょっと堅苦しい話ですが、筋収縮にはこのような歴史的経緯が存在しました。

ですが、私達が筋収縮と言った場合は必ずしも外観上の収縮を伴う必要はありません。

では、筋収縮の定義とはなんなのかというと「筋肉が筋肉自体の中心方向に向かって能動的に力を発揮する」ということです。

力自体が中央に向かって生じていればいいのですから、伸縮性収縮はもちろんのこと、筋肉の両端が固定された「等尺性収縮」で筋肉自体の長さが変わらなくても、筋肉が力を発揮しているならば筋収縮ということになるのです。

「筋肉自体の中心方向に向かって」と言いましたが、実際には筋肉が力を発揮する方法には選択肢があまりありません。

一次元一方向、つまり直線的な力を、なおかつ中心方向に向かって発揮することしか出来ないのです。

逆方向、つまり中心から外側に向かって力を発揮する筋肉も存在するのでは

と誤解する人もいるかもしれませんが、力のベクトルとしては中心方向だけです。

逆方向に伸びるということはありません。

一方向にしか縮めないということは、縮みきってしまったら元に戻らないということになります。

しかしそれでは困るので、それぞれの筋肉は必ず自分を伸ばしてくれるパートナーを持っています。

それが「拮抗筋」であり、例えば上腕二頭筋に対する上腕三頭筋、大腿四頭筋に対するハムストリングスなどがそれに当てはまります

筋力トレーニングのような特殊な運動を行う場合は、重力やバーベルなどの負荷が筋肉を引き伸ばしています。

そのため拮抗筋はほとんど働いていません。ですが、日常生活やスポーツなどの場合は拮抗筋が働かなければ筋肉は縮んだままになってしまいます。

この拮抗筋同士の力のバランスが崩れしまうと、やがて運動が下手になってしまう可能性が高くなります。

それが続いてしまえば、慢性的な障害に繋がる危険性も出てきてしまいます。

さらに、拮抗筋同士が共収縮することでより強い動作を行ったり、関節にかかるストレスを和らげたりもしていますので、拮抗筋同士はバランスよくトレーニングする必要があります

では、そもそも拮抗筋同士は常にバランスが取れているのでしょうか?

実はそうでもないのです。なぜなら、屈筋はスピードや可動域重視の、伸筋は力重視の構造をしているからです。

例えば、膝の屈筋は伸筋の50~60%と言われています。

ごく普通に生活を送る上ではこの差は大した問題にはなりません、しかし、スプリンターやジャンパーとなると話は別です。

例えば、非常に大きな力を下半身が発揮する時には、大腿四頭筋とハムストリングスが協調して収縮する仕組みが存在するため、ハムストリングスが5~6割しか力を発揮できない状態は好ましくありません。

その筋力のまま競技を継続すると、大腿四頭筋からの力に耐えることが出来ず、ハムストリングスが肉離れを起こしてしまったり、より重度の障害が起こってしまう可能性があります。

ですから、スプリンターやジャンパーは、筋力トレーニングによってハムストリングスを強化します。

その結果、外観上にはハムストリングスのほうが大腿四頭筋よりも太くなるのです。

一流選手を見ると、太ももの裏側が非常に発達しています。

そうした脚を作り上げることにより、彼らは拮抗筋のバランスをうまく調整しているのです。

 

筋収縮の形態にはどんなものがあるの?

筋収縮には4つの種類があります。ちょっと難しい話なのですが、知っておくと「なるほど!だから筋肉はこのような動きをするのか!」とわかることなのでちょっと目を通してみてください。

等尺性収縮

筋収縮とは筋肉が縮みながら中心方向に向かって力を出すわけですから、筋収縮の状態を表すためのパラメータは、「力」と「長さ」になります。

この2つが時間経過と共に変化していくこと、これが筋収縮の本質となります。

理屈としては簡単ですが、力も長さも、時々刻刻と変化するため、筋の特性を調べるのは実際簡単なことではありません。

そこで筋肉が置かれている条件を単純化することで、筋力や筋長を測る方法がいくつかあります。

その1つ目が等尺性収縮です。この測定方法は、まず握力や背筋力を測る時のように、筋肉の両端が固定された状態にします。

こうなると筋肉の長さが変わらないため、時間経過と共に変化していく力を測定すればいいという単純な測定方法になります。

この方法は、握力計や背筋力計で発揮される最大筋力が高い人は、物を持ち上げる動きや力の中で発揮する力も強い、という前提で計測されています。

しかしながら、現実にはそれはイコールではありません。

例えば背筋力計で、200kgの数値が出たとしても、200kgのバーベルをデッドリフトで持ち上げるのは困難でしょう。

おそらく1RMは170kg程度に落ちると思われます。

等尺性収縮は分かりやすいとされる方法のため伝統的によく行われていますが、必ずしも運動の中で出される正確な力を測定出来るとは限らないのです。

等張力性収縮

2つ目に挙げられるのは等張力性収縮です。

これは等尺性収縮とは逆で、筋肉が発揮する力を一定の大きさにする方法です。

1番簡単とされるのは滑車を介したケーブルを使用して負荷を引っ張っていくやり方です。

滑車によって関節の角度に関わらず筋肉へかかる負荷が一定になるため、ケーブルを一定の速度で引き上げれば、理論的には等張力性収縮が成立するのです。

ただ、これにも問題はあります。

負荷が動き出した後ならば速度を一定にすることも可能ですが、速度ゼロの負荷を動かし始める場合は、慣性に逆らって負荷を加速しなければならないのです。

つまり、最初に発揮する力はどうしても大きくならざるをえません

また、筋肉には長さに応じて筋力が変わるという特性があるため、筋肉の収縮が進行するに従って最大筋力も刻々と変化してしまいます。

これらの理由から筋肉にとっての負荷は必ずしも一定ではなくなります

そのため、見かけは等張力ですが筋肉の立場からすると、常に同じ条件ではなくなってしまうわけです。

本当に正確な数値を測定するためには、負荷が一定になるようにモーターでコントロールしたり、筋力が途中で変化しないようにごく短い収縮範囲の間で性質を調べたりするなど、厳密な条件が必要になります。

それ故に非常に難しい実験手法になってしまいます。

等速性収縮

次に3つ目、等速性収縮についてです。

実は筋肉には、「一定の負荷の下で張力が一定の大きさをキープしている間は同じ速度で収縮する」という特性が存在します

数十年前に報告されているこの性質を利用することで、モーターなどで外側から筋肉が縮む速度を一定にすると、ある一定の速度下で筋肉が発揮する力を測定することが出来ます。

これは、ある筋力を発揮する時に筋肉が出せる速度を測っているのと同じということです。

この方法は一定の速度でモーターを動かすだけでいいので、等張力性収縮の測定よりずっと簡単です。

ところが、これにも色々と制約が存在します。

速度を一定にして力を測ることと、力を一定にした上で速度を測ることとは厳密には1:1にはならず、速度を一定にしても筋肉が発揮する力は変化しています。

つまり、等速性収縮はあくまでも簡易的なものであり、筋肉そのものの性質を詳しく調べることには向いていないのです。

とはいえ、理想の条件ではないものまでも簡単に筋肉の情報を得ることが出来るため、トレーニング科学としての分野ではこの等速性筋力計が主に使われています。

増張力性収縮

そして、最後に挙げられるのは増張力性収縮です。

これは、ゴムやバネを引っ張るように、時間の経過と共に筋肉が短くなる一方で、筋肉自体にかかる負荷が次第に増加するという条件になります。

バネは伸びに比例して弾性力を発揮するため、伸ばせば伸ばすほど発揮される筋力も増えていきます。

この方法は筋力測定ではあまり使われませんが、トレーニングとしてはよく使われています。

チューブトレーニングや、昔流行ったエキスパンダーなどがそれに当てはまります。

以上、4種類の筋収縮の説明をしてきましたが、トレーニングの場で最も使われているのは等張力性収縮です。

滑車を使って負荷を持ち上げることやバーベルはもちろん、自重負荷を使った腕立て伏せや懸垂なども、負荷は一定のため見かけ上は等張力性になります。

こうしたトレーニングのことを「アイソトニックトレーニング」と呼びます。

ただし、滑車なら問題ないのですが、フリーウェイトを使用する場合は動作とともに負荷が変化してしまいます

ダンベルカールが最も分かりやすい例ですが、ダンベルが下にあるとほとんど負荷がかかりません。

持ち上げる過程でテコの原理で負荷が大きくなり、前腕と床が平行になるポイントをピークとして、また軽くなる、という繰り返しになります。

この繰り返しの中で負荷が常に変動するため、厳密な意味でのアイソトニックトレーニングとは言えません。

アイソトニックトレーニングを行う際はこの点に注意して行いましょう。

 

短縮性収縮と伸張性収縮って何が違うの?

収縮することによって者に力を加えつつ、加速度、運動エネルギーを与えることが筋肉のもつ最も基本となる働きです

「1度縮んでしまった筋肉は拮抗筋や重力の力を借りて伸びる」というこの仕組みだけなら簡単なことなのですが、負荷を加速したりエネルギーを与えることだけが筋肉の働きではありません。

もう1つ、重要な役割として「運動にブレーキをかける」というものがあります。

例えば、ジャンプをする時をイメージしてください。跳び上がるという行動の時には主に大腿四頭筋を使っています。

しかし、実際の運動は跳び上がるだけでは終わりません。

その後、重力によって落下して地面に下りるという段階があります。

着地した瞬間というのは、体重の5~10倍程の非常に大きな衝撃が働きます

これは衝突と言えるほどの衝撃です。この力をまともに受け止めてしまうと、体はダメージを負ってしまう危険性があるため、ブレーキをかけながら軟着陸しなければならないのです。

この時に、筋肉が働くのです。

着地する際の動きは、跳び上がる映像を巻き戻ししたかのように全く逆になるのが理想的です。

その自然な動きで着地をすることが出来れば、最も体に負担のかからない動きということになります。

しかし実際は跳び上がる時と、着地をする時では筋肉の働き方は違います。

跳び上がる時は、力を出しながら筋肉が短くなっている「短縮性収縮」となります。

一方で、着地時は力を発揮しながら外力によって筋肉が引き伸ばされているので、「伸張性収縮」を使っています。

伸張性収縮は、主に、筋肉をブレーキとして働かせる状況と覚えておけばいいのです。

ここで1つの基本的な疑問が浮上してきます。

ジャンプをするときに体を支えている負荷となる体重は跳び上がる時も下りる時も変化することはありません。

しかも、短縮性収縮による運動の巻き戻し動作になるため、跳ぶ時と下りる時に同じような過程で力を発揮することになります

それなのに、どうして運動の方向は反対になるのでしょうか?

ダンベルカールを例として挙げると、ダンベルを持ち上げる時には短縮性収縮、下ろす時はブレーキをかけながらゆっくり下ろします。

つまり伸張性収縮になります。

肘の位置を固定した状態で同じ速度でダンベルを上下させた場合、これもジャンプと同じで巻き戻しになります。

筋肉が発揮している力も同じ大きさになります。

ではなぜ一方では持ち上がり、一方ではダンベルが下がってくるのでしょう。

その理由は、短縮性収縮と伸張性収縮で使われている筋線維の数の違いにあります。

ダンベルカールを行う時の上腕二頭筋を例に説明しましょう。仮に、上腕二頭筋に100本の筋線維があるとすると、持ち上げている時には80本を使っています。

ところが下ろしている時には40本しか使っていないのです。

そのように、使う筋線維の数を減らしてしまうことにより、筋線維がダンベルの重量に耐えられなくなり、次第に下がってくるということになるのです。

その中で、伸張性収縮の特徴である、発揮できる力が大きくなるというものが関わってきます。

実際、伸張性収縮をしている時は、筋線維の数が少なくとも、1本1本の筋線維が出している力は大きくなっているのです。

そのため、短縮性収縮と伸張性収縮は見かけ上、同程度の力を発揮しているように見えるのです。

 

まとめ

今回は筋肉の収縮について詳しく説明しました。トレーニングの中で、筋肉に負荷をかけると必ずその中では収縮が起こっています。

そんな収縮について知ることで、新たなトレーニングの見方をすることが可能になるかもしれません

これから行うトレーニングはぜひとも質の高い方法を目指していきましょう。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

http://bodyke-live.com/wp-content/uploads/2018/03/crossfit-534615_1920-1024x683.jpghttp://bodyke-live.com/wp-content/uploads/2018/03/crossfit-534615_1920-150x150.jpgBodykeLIVE体の仕組み基礎知識こんにちはパーソナルトレーナーの渡辺です。私たちの体には筋肉が全身にありますが、もしもこの筋肉がなかったならば体を動かすどころか起き上がることもできません。体を動かすのには筋肉が収縮を繰り返すことが必要です。そもそも筋収縮の定義とはなんでしょうか?これは、「筋肉が筋肉自体の中心方向に向かって能動的に力を発揮する」ということです。そんな筋収縮には4つの形態が存在し、トレーニングの種類やどのような運動を行うかによって、それぞれ使われる筋収縮は異なります。例えばトレーニングの現場で最も使われているのは「等張力性収縮」です。これは筋肉が出す力を一定にする方法です。また、「短縮性収縮」と「伸張性収縮」とでは使われている筋線維の数が違います。見かけでは似たような力を出していても、実は中身は違っている。今回はそんな筋肉の中身、収縮についてご紹介していきましょう。筋収縮はどんな仕組み?さて、「筋収縮」というものはどういうものなのでしょう。まずその単語について少し説明していきましょう。「収縮」という言葉の本来の意味としては物理的に小さく短くなるということのため、一時期「伸張性収縮で収縮という単語を使用するのはおかしいのではないか」という議論がありました。伸張性収縮とは、筋肉がブレーキとしての力を発揮した状態のまま引き伸ばされているものです。これは、バーベルをゆっくりと下ろしている状態などが当てはまります。この場合、筋肉そのものは収縮しているのではなく、伸張しているのです。それなのに収縮という単語を使うのはおかしいのでは?ということです。後になってその議論は、筋収縮という言葉を使わずに「筋活動」にしようという話に発展していきました。そのため、今でも運動生理学の分野で「筋収縮」というと筋肉が短くなる状態を指す場合が多く、筋肉が力を発揮している状態そのものを「筋活動」と総称するケースが多いのです。しかし、筋活動と言ってしまうと筋肉が行う力学的な働き以外に、熱を出すことなども含まれてしまうため、用語としては逆に分かりにくくなってしまうという反対意見もありました。ちょっと堅苦しい話ですが、筋収縮にはこのような歴史的経緯が存在しました。ですが、私達が筋収縮と言った場合は必ずしも外観上の収縮を伴う必要はありません。では、筋収縮の定義とはなんなのかというと「筋肉が筋肉自体の中心方向に向かって能動的に力を発揮する」ということです。力自体が中央に向かって生じていればいいのですから、伸縮性収縮はもちろんのこと、筋肉の両端が固定された「等尺性収縮」で筋肉自体の長さが変わらなくても、筋肉が力を発揮しているならば筋収縮ということになるのです。「筋肉自体の中心方向に向かって」と言いましたが、実際には筋肉が力を発揮する方法には選択肢があまりありません。一次元一方向、つまり直線的な力を、なおかつ中心方向に向かって発揮することしか出来ないのです。逆方向、つまり中心から外側に向かって力を発揮する筋肉も存在するのでは?と誤解する人もいるかもしれませんが、力のベクトルとしては中心方向だけです。逆方向に伸びるということはありません。一方向にしか縮めないということは、縮みきってしまったら元に戻らないということになります。しかしそれでは困るので、それぞれの筋肉は必ず自分を伸ばしてくれるパートナーを持っています。それが「拮抗筋」であり、例えば上腕二頭筋に対する上腕三頭筋、大腿四頭筋に対するハムストリングスなどがそれに当てはまります。筋力トレーニングのような特殊な運動を行う場合は、重力やバーベルなどの負荷が筋肉を引き伸ばしています。そのため拮抗筋はほとんど働いていません。ですが、日常生活やスポーツなどの場合は拮抗筋が働かなければ筋肉は縮んだままになってしまいます。この拮抗筋同士の力のバランスが崩れしまうと、やがて運動が下手になってしまう可能性が高くなります。それが続いてしまえば、慢性的な障害に繋がる危険性も出てきてしまいます。さらに、拮抗筋同士が共収縮することでより強い動作を行ったり、関節にかかるストレスを和らげたりもしていますので、拮抗筋同士はバランスよくトレーニングする必要があります。では、そもそも拮抗筋同士は常にバランスが取れているのでしょうか?実はそうでもないのです。なぜなら、屈筋はスピードや可動域重視の、伸筋は力重視の構造をしているからです。例えば、膝の屈筋は伸筋の50~60%と言われています。ごく普通に生活を送る上ではこの差は大した問題にはなりません、しかし、スプリンターやジャンパーとなると話は別です。例えば、非常に大きな力を下半身が発揮する時には、大腿四頭筋とハムストリングスが協調して収縮する仕組みが存在するため、ハムストリングスが5~6割しか力を発揮できない状態は好ましくありません。その筋力のまま競技を継続すると、大腿四頭筋からの力に耐えることが出来ず、ハムストリングスが肉離れを起こしてしまったり、より重度の障害が起こってしまう可能性があります。ですから、スプリンターやジャンパーは、筋力トレーニングによってハムストリングスを強化します。その結果、外観上にはハムストリングスのほうが大腿四頭筋よりも太くなるのです。一流選手を見ると、太ももの裏側が非常に発達しています。そうした脚を作り上げることにより、彼らは拮抗筋のバランスをうまく調整しているのです。 筋収縮の形態にはどんなものがあるの?筋収縮には4つの種類があります。ちょっと難しい話なのですが、知っておくと「なるほど!だから筋肉はこのような動きをするのか!」とわかることなのでちょっと目を通してみてください。等尺性収縮筋収縮とは筋肉が縮みながら中心方向に向かって力を出すわけですから、筋収縮の状態を表すためのパラメータは、「力」と「長さ」になります。この2つが時間経過と共に変化していくこと、これが筋収縮の本質となります。理屈としては簡単ですが、力も長さも、時々刻刻と変化するため、筋の特性を調べるのは実際簡単なことではありません。そこで筋肉が置かれている条件を単純化することで、筋力や筋長を測る方法がいくつかあります。その1つ目が等尺性収縮です。この測定方法は、まず握力や背筋力を測る時のように、筋肉の両端が固定された状態にします。こうなると筋肉の長さが変わらないため、時間経過と共に変化していく力を測定すればいいという単純な測定方法になります。この方法は、握力計や背筋力計で発揮される最大筋力が高い人は、物を持ち上げる動きや力の中で発揮する力も強い、という前提で計測されています。しかしながら、現実にはそれはイコールではありません。例えば背筋力計で、200kgの数値が出たとしても、200kgのバーベルをデッドリフトで持ち上げるのは困難でしょう。おそらく1RMは170kg程度に落ちると思われます。等尺性収縮は分かりやすいとされる方法のため伝統的によく行われていますが、必ずしも運動の中で出される正確な力を測定出来るとは限らないのです。等張力性収縮2つ目に挙げられるのは等張力性収縮です。これは等尺性収縮とは逆で、筋肉が発揮する力を一定の大きさにする方法です。1番簡単とされるのは滑車を介したケーブルを使用して負荷を引っ張っていくやり方です。滑車によって関節の角度に関わらず筋肉へかかる負荷が一定になるため、ケーブルを一定の速度で引き上げれば、理論的には等張力性収縮が成立するのです。ただ、これにも問題はあります。負荷が動き出した後ならば速度を一定にすることも可能ですが、速度ゼロの負荷を動かし始める場合は、慣性に逆らって負荷を加速しなければならないのです。つまり、最初に発揮する力はどうしても大きくならざるをえません。また、筋肉には長さに応じて筋力が変わるという特性があるため、筋肉の収縮が進行するに従って最大筋力も刻々と変化してしまいます。これらの理由から筋肉にとっての負荷は必ずしも一定ではなくなります。そのため、見かけは等張力ですが筋肉の立場からすると、常に同じ条件ではなくなってしまうわけです。本当に正確な数値を測定するためには、負荷が一定になるようにモーターでコントロールしたり、筋力が途中で変化しないようにごく短い収縮範囲の間で性質を調べたりするなど、厳密な条件が必要になります。それ故に非常に難しい実験手法になってしまいます。等速性収縮次に3つ目、等速性収縮についてです。実は筋肉には、「一定の負荷の下で張力が一定の大きさをキープしている間は同じ速度で収縮する」という特性が存在します。数十年前に報告されているこの性質を利用することで、モーターなどで外側から筋肉が縮む速度を一定にすると、ある一定の速度下で筋肉が発揮する力を測定することが出来ます。これは、ある筋力を発揮する時に筋肉が出せる速度を測っているのと同じということです。この方法は一定の速度でモーターを動かすだけでいいので、等張力性収縮の測定よりずっと簡単です。ところが、これにも色々と制約が存在します。速度を一定にして力を測ることと、力を一定にした上で速度を測ることとは厳密には1:1にはならず、速度を一定にしても筋肉が発揮する力は変化しています。つまり、等速性収縮はあくまでも簡易的なものであり、筋肉そのものの性質を詳しく調べることには向いていないのです。とはいえ、理想の条件ではないものまでも簡単に筋肉の情報を得ることが出来るため、トレーニング科学としての分野ではこの等速性筋力計が主に使われています。増張力性収縮そして、最後に挙げられるのは増張力性収縮です。これは、ゴムやバネを引っ張るように、時間の経過と共に筋肉が短くなる一方で、筋肉自体にかかる負荷が次第に増加するという条件になります。バネは伸びに比例して弾性力を発揮するため、伸ばせば伸ばすほど発揮される筋力も増えていきます。この方法は筋力測定ではあまり使われませんが、トレーニングとしてはよく使われています。チューブトレーニングや、昔流行ったエキスパンダーなどがそれに当てはまります。以上、4種類の筋収縮の説明をしてきましたが、トレーニングの場で最も使われているのは等張力性収縮です。滑車を使って負荷を持ち上げることやバーベルはもちろん、自重負荷を使った腕立て伏せや懸垂なども、負荷は一定のため見かけ上は等張力性になります。こうしたトレーニングのことを「アイソトニックトレーニング」と呼びます。ただし、滑車なら問題ないのですが、フリーウェイトを使用する場合は動作とともに負荷が変化してしまいます。ダンベルカールが最も分かりやすい例ですが、ダンベルが下にあるとほとんど負荷がかかりません。持ち上げる過程でテコの原理で負荷が大きくなり、前腕と床が平行になるポイントをピークとして、また軽くなる、という繰り返しになります。この繰り返しの中で負荷が常に変動するため、厳密な意味でのアイソトニックトレーニングとは言えません。アイソトニックトレーニングを行う際はこの点に注意して行いましょう。 短縮性収縮と伸張性収縮って何が違うの?収縮することによって者に力を加えつつ、加速度、運動エネルギーを与えることが筋肉のもつ最も基本となる働きです。「1度縮んでしまった筋肉は拮抗筋や重力の力を借りて伸びる」というこの仕組みだけなら簡単なことなのですが、負荷を加速したりエネルギーを与えることだけが筋肉の働きではありません。もう1つ、重要な役割として「運動にブレーキをかける」というものがあります。例えば、ジャンプをする時をイメージしてください。跳び上がるという行動の時には主に大腿四頭筋を使っています。しかし、実際の運動は跳び上がるだけでは終わりません。その後、重力によって落下して地面に下りるという段階があります。着地した瞬間というのは、体重の5~10倍程の非常に大きな衝撃が働きます。これは衝突と言えるほどの衝撃です。この力をまともに受け止めてしまうと、体はダメージを負ってしまう危険性があるため、ブレーキをかけながら軟着陸しなければならないのです。この時に、筋肉が働くのです。着地する際の動きは、跳び上がる映像を巻き戻ししたかのように全く逆になるのが理想的です。その自然な動きで着地をすることが出来れば、最も体に負担のかからない動きということになります。しかし実際は跳び上がる時と、着地をする時では筋肉の働き方は違います。跳び上がる時は、力を出しながら筋肉が短くなっている「短縮性収縮」となります。一方で、着地時は力を発揮しながら外力によって筋肉が引き伸ばされているので、「伸張性収縮」を使っています。伸張性収縮は、主に、筋肉をブレーキとして働かせる状況と覚えておけばいいのです。ここで1つの基本的な疑問が浮上してきます。ジャンプをするときに体を支えている負荷となる体重は跳び上がる時も下りる時も変化することはありません。しかも、短縮性収縮による運動の巻き戻し動作になるため、跳ぶ時と下りる時に同じような過程で力を発揮することになります。それなのに、どうして運動の方向は反対になるのでしょうか?ダンベルカールを例として挙げると、ダンベルを持ち上げる時には短縮性収縮、下ろす時はブレーキをかけながらゆっくり下ろします。つまり伸張性収縮になります。肘の位置を固定した状態で同じ速度でダンベルを上下させた場合、これもジャンプと同じで巻き戻しになります。筋肉が発揮している力も同じ大きさになります。ではなぜ一方では持ち上がり、一方ではダンベルが下がってくるのでしょう。その理由は、短縮性収縮と伸張性収縮で使われている筋線維の数の違いにあります。ダンベルカールを行う時の上腕二頭筋を例に説明しましょう。仮に、上腕二頭筋に100本の筋線維があるとすると、持ち上げている時には80本を使っています。ところが下ろしている時には40本しか使っていないのです。そのように、使う筋線維の数を減らしてしまうことにより、筋線維がダンベルの重量に耐えられなくなり、次第に下がってくるということになるのです。その中で、伸張性収縮の特徴である、発揮できる力が大きくなるというものが関わってきます。実際、伸張性収縮をしている時は、筋線維の数が少なくとも、1本1本の筋線維が出している力は大きくなっているのです。そのため、短縮性収縮と伸張性収縮は見かけ上、同程度の力を発揮しているように見えるのです。 まとめ今回は筋肉の収縮について詳しく説明しました。トレーニングの中で、筋肉に負荷をかけると必ずその中では収縮が起こっています。そんな収縮について知ることで、新たなトレーニングの見方をすることが可能になるかもしれません。これから行うトレーニングはぜひとも質の高い方法を目指していきましょう。ボディークライブは、プロのトレーナーが執筆・監修した確かな情報だけをお届けします。ダイエットに悩んでいる方、ボディメイクが好きな方、健康な生活を送りたい方必見!