運動後に筋肉痛になる原因と治療方法を解説
トレーニングやスポーツをすると、筋肉痛になることが多いですよね。痛くてうまく体を動かせない状態になることもありますが、どうして筋肉痛になるのでしょうか?その原因を正しく知っている人は少ないはず。
実は筋肉痛には運動だけでなく、活性酸素も影響しています。原理を知れば筋肉痛を早く治すことも可能。そこで今回は筋肉痛の種類や仕組みについて詳しく解説し、回復の方法もご紹介します。
Contents
筋肉痛には種類がある
筋肉痛には2つの種類があります。専門用語で「即発性筋痛」と「遅発性筋痛」と呼ばれていますが、まずはこの2種類の筋肉痛の違いについて知っておきましょう。
即発性筋痛
即発性筋痛というのは運動中や運動後に発生する筋肉痛のことで、一般的に知られている筋肉痛とは少し異なります。痛みの他にだるさや体の重さなどが感じられ、痛みの持続時間が短いのが特徴。即発性筋痛が起こりやすいのは、体に対する負荷が大きい運動や激しい運動をしたときです[1]。
遅発性筋痛
遅発性筋痛が一般的に「筋肉痛」と呼ばれているものです。次のように、運動をした翌日以降に痛みが現れて2~3日続き、少しずつ痛みが消えていくことが特徴。
遅発性筋肉痛(DelayedOnsetMuscleSoreness:DOMS)は,運動後数時間から24時間程度経過して,筋を圧迫したり動かしたりした時に知覚され,運動1~3日後にピークとなり,7~10日以内には消失する.
遅発性筋痛が起こりやすいのは、慣れない運動をしたとき、運動をしすぎたとき、筋肉を引き伸ばすような動きをしたときです。即発性筋痛よりも痛みの持続時間が長いため、スポーツをする人に心理的ストレスを与えます[2]。
筋肉痛が起こる原因
2つの種類がある筋肉痛。それぞれ起こる原因も違うので、発生するメカニズムについて解説します。
即発性筋痛が起こる原因
即発性筋痛が起こる原因は、運動時に発生する物質が原因だと言われています。
筋肉痛の発生機序については諸説あるが、前者は激しい運動による局所の循環傷害に起因する乳酸や水素イオン等の発痛物質の蓄積によるもの、…中略…
このように筋肉が激しく動くと乳酸という物質が発生し、乳酸が作られる段階で発生する水素イオンが痛みを引き起こすのです。
遅発性筋痛が起こる原因
遅発性筋痛が起こる原因は、筋肉の線維や周辺の組織が傷つくことと考えられます。
DOMSが筋や結合組織の損傷を引き起こす伸張性(エクセントリック)筋活動を含む運動で生じやすいことから,筋線維あるいは結合組織の損傷,炎症が原因だと考えられている.
「DOMS」は遅発性筋痛のことです。筋肉が伸びると、張力に耐えられなくなった筋線維が切れます。体内組織が傷つくと体はその部分を治そうとして炎症が発生[2]。その際にブラジキニン、ヒスタミンなど痛みの原因物質が活性化され筋肉痛を引き起こします。
筋肉痛が起こりやすい動作って?
筋肉痛が起こりやすい運動は「ブレーキング動作」を含むもの。例えば登山なら上るときよりも下りるとき、ベンチプレスならバーベルを上げるよりも下ろすときに筋肉痛が起こりやすくなります。
これまでの研究より,階段を下りる時やジャンプ後の着地時の大腿四頭筋,ビールジョッキをゆっくりとテーブルの上に置くときの上腕二頭筋,およびベンチプレスでバーベルを下す時の大胸筋の活動にみられるように,筋が収縮しながらも引き伸ばされる伸張性筋収縮(eccentric contraction;ECC)が繰り返し行われることによって筋の微細構造および細胞骨格に損傷が生じることが明らかになっている。
このように「下ろす」「下りる」という動作を含む運動は、筋肉が伸びながら縮むため筋肉痛が引き起こされるのです。上げるときは縮むだけなので、筋肉繊維が切れる可能性は低くなります。
筋肉痛になりやすい人の特徴
筋肉痛になりやすい人となりにくい人がいますが、すぐに筋肉痛になるという人には次のような特徴があります。
定期的に運動をしていない人
筋肉痛は筋肉の状態に依存するので、普段あまり運動していない人の筋肉のほうが傷つきやすいと言えます。運動をしないと筋肉は強くならず、軽い動きでも筋繊維が切れてしまうのです。
逆に不慣れな運動を急に行うと遅発性筋肉痛や整形外科的損傷のリスクが高まり,血中好中球やリンパ球の変動,サイトカインの血中濃度上昇も生じる.
好中球は傷ついた組織に集まって修復を行う物質で、サイトカインは炎症を引き起こすたんぱく質です。筋肉痛が起きやすくなるだけでなく、痛みの程度が強くなる可能性もあるでしょう。
高齢の人
「年をとったからすぐ筋肉痛になる」と聞きますが、これは年をとると筋肉が弱くなって筋力が低下するからです。また普段の運動量が減ることも原因のひとつでしょう。80代の人は20代の人と比べて下半身の筋肉量が約30%も少なくなります[4]。ただし年をとっても鍛えて筋力をつけることは可能で、それには毎日のトレーニングが大切です[5]。
筋肉痛と活性酸素は深い結びつきがある
筋肉痛が起こると、白血球が集まって活性酸素を作り出します。この活性酸素は、細菌などの病原体を殺したり、傷ついた場所を治したりする効果があります。その際には足りなくならないように多めに治そうとする特性があるため、筋肉痛がひどくなったり長引いたりすることがあります。
この活性酸素に対する抵抗力は、若い人ほど強く年齢を重ねていくことにより弱くなっていきます。若いころは数日で治った筋肉痛が、何日も続くのは活性酸素に対する抵抗力が弱くなったことによるものでしょう。
筋肉痛を早く治すには
筋肉痛が起こってしまった場合、どのように治すのがベストだと思いますか?
運動直後であれば「冷やす」のが良い行動です。そして、運動から時間が経って夜になったのならば、お風呂に入り血流を良くしてストレッチを行いましょう。血行を促すことにより、炎症の治癒を早めます。また、運動後にストレッチやダウン動作をいれることで筋肉痛を軽減することができます。
筋肉を回復させるには抗酸化物質を摂取しよう
活性酸素のオーバーリアクションを防ぐために、ビタミンCやビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化物質を摂取するのもよいでしょう。
柑橘類やごま油などを積極的に料理に使い、不足している分はサプリメントで補うのがおすすめです。これらの栄養素をしっかりと摂ることで筋肉痛を早く治して、筋肉を回復させることができます。
参考文献
参考[1]:JSTAGE:(PDF)トライアスロン競技後の筋肉痛に及ぼす円皮鍼の効果
参考[2]:JSTAGE:(PDF)遅発性筋痛に対する超音波療法の経時的・即時的効果
参考[3]:JSTAGE:(PDF)ストレッチングのエビデンス
参考[4]:JSTAGE:(PDF)日本人筋肉量の加齢による特徴
参考[5]:JSTAGE:(PDF)高齢者の筋力と筋力トレーニング
http://bodyke-live.com/basic-knowledge/reasons-of-muscle-pain/http://bodyke-live.com/wp-content/uploads/2017/08/muscle-pain.jpghttp://bodyke-live.com/wp-content/uploads/2017/08/muscle-pain-150x150.jpg基礎知識トレーニングやスポーツをすると、筋肉痛になることが多いですよね。痛くてうまく体を動かせない状態になることもありますが、どうして筋肉痛になるのでしょうか?その原因を正しく知っている人は少ないはず。実は筋肉痛には運動だけでなく、活性酸素も影響しています。原理を知れば筋肉痛を早く治すことも可能。そこで今回は筋肉痛の種類や仕組みについて詳しく解説し、回復の方法もご紹介します。筋肉痛には種類がある筋肉痛には2つの種類があります。専門用語で「即発性筋痛」と「遅発性筋痛」と呼ばれていますが、まずはこの2種類の筋肉痛の違いについて知っておきましょう。即発性筋痛即発性筋痛というのは運動中や運動後に発生する筋肉痛のことで、一般的に知られている筋肉痛とは少し異なります。痛みの他にだるさや体の重さなどが感じられ、痛みの持続時間が短いのが特徴。即発性筋痛が起こりやすいのは、体に対する負荷が大きい運動や激しい運動をしたときです[1]。遅発性筋痛遅発性筋痛が一般的に「筋肉痛」と呼ばれているものです。次のように、運動をした翌日以降に痛みが現れて2~3日続き、少しずつ痛みが消えていくことが特徴。遅発性筋肉痛(DelayedOnsetMuscleSoreness:DOMS)は,運動後数時間から24時間程度経過して,筋を圧迫したり動かしたりした時に知覚され,運動1~3日後にピークとなり,7~10日以内には消失する. 出典:JSTAGE:(PDF)遅発性筋肉痛の程度は筋損傷の程度を反映しているか?遅発性筋痛が起こりやすいのは、慣れない運動をしたとき、運動をしすぎたとき、筋肉を引き伸ばすような動きをしたときです。即発性筋痛よりも痛みの持続時間が長いため、スポーツをする人に心理的ストレスを与えます[2]。筋肉痛が起こる原因2つの種類がある筋肉痛。それぞれ起こる原因も違うので、発生するメカニズムについて解説します。即発性筋痛が起こる原因即発性筋痛が起こる原因は、運動時に発生する物質が原因だと言われています。筋肉痛の発生機序については諸説あるが、前者は激しい運動による局所の循環傷害に起因する乳酸や水素イオン等の発痛物質の蓄積によるもの、…中略… 出典:JSTAGE:(PDF)トライアスロン競技後の筋肉痛に及ぼす円皮鍼の効果このように筋肉が激しく動くと乳酸という物質が発生し、乳酸が作られる段階で発生する水素イオンが痛みを引き起こすのです。遅発性筋痛が起こる原因遅発性筋痛が起こる原因は、筋肉の線維や周辺の組織が傷つくことと考えられます。DOMSが筋や結合組織の損傷を引き起こす伸張性(エクセントリック)筋活動を含む運動で生じやすいことから,筋線維あるいは結合組織の損傷,炎症が原因だと考えられている. 出典:JSTAGE:(PDF)遅発性筋肉痛の程度は筋損傷の程度を反映しているか?「DOMS」は遅発性筋痛のことです。筋肉が伸びると、張力に耐えられなくなった筋線維が切れます。体内組織が傷つくと体はその部分を治そうとして炎症が発生[2]。その際にブラジキニン、ヒスタミンなど痛みの原因物質が活性化され筋肉痛を引き起こします。筋肉痛が起こりやすい動作って?筋肉痛が起こりやすい運動は「ブレーキング動作」を含むもの。例えば登山なら上るときよりも下りるとき、ベンチプレスならバーベルを上げるよりも下ろすときに筋肉痛が起こりやすくなります。これまでの研究より,階段を下りる時やジャンプ後の着地時の大腿四頭筋,ビールジョッキをゆっくりとテーブルの上に置くときの上腕二頭筋,およびベンチプレスでバーベルを下す時の大胸筋の活動にみられるように,筋が収縮しながらも引き伸ばされる伸張性筋収縮(eccentric contraction;ECC)が繰り返し行われることによって筋の微細構造および細胞骨格に損傷が生じることが明らかになっている。 出典:JSTAGE:(PDF)伸張性運動による筋損傷が運動機能に与える影響このように「下ろす」「下りる」という動作を含む運動は、筋肉が伸びながら縮むため筋肉痛が引き起こされるのです。上げるときは縮むだけなので、筋肉繊維が切れる可能性は低くなります。筋肉痛になりやすい人の特徴筋肉痛になりやすい人となりにくい人がいますが、すぐに筋肉痛になるという人には次のような特徴があります。定期的に運動をしていない人筋肉痛は筋肉の状態に依存するので、普段あまり運動していない人の筋肉のほうが傷つきやすいと言えます。運動をしないと筋肉は強くならず、軽い動きでも筋繊維が切れてしまうのです。逆に不慣れな運動を急に行うと遅発性筋肉痛や整形外科的損傷のリスクが高まり,血中好中球やリンパ球の変動,サイトカインの血中濃度上昇も生じる. 出典:JSTAGE:(PDF)運動と免疫好中球は傷ついた組織に集まって修復を行う物質で、サイトカインは炎症を引き起こすたんぱく質です。筋肉痛が起きやすくなるだけでなく、痛みの程度が強くなる可能性もあるでしょう。高齢の人「年をとったからすぐ筋肉痛になる」と聞きますが、これは年をとると筋肉が弱くなって筋力が低下するからです。また普段の運動量が減ることも原因のひとつでしょう。80代の人は20代の人と比べて下半身の筋肉量が約30%も少なくなります[4]。ただし年をとっても鍛えて筋力をつけることは可能で、それには毎日のトレーニングが大切です[5]。筋肉痛と活性酸素は深い結びつきがある筋肉痛が起こると、白血球が集まって活性酸素を作り出します。この活性酸素は、細菌などの病原体を殺したり、傷ついた場所を治したりする効果があります。その際には足りなくならないように多めに治そうとする特性があるため、筋肉痛がひどくなったり長引いたりすることがあります。この活性酸素に対する抵抗力は、若い人ほど強く年齢を重ねていくことにより弱くなっていきます。若いころは数日で治った筋肉痛が、何日も続くのは活性酸素に対する抵抗力が弱くなったことによるものでしょう。筋肉痛を早く治すには筋肉痛が起こってしまった場合、どのように治すのがベストだと思いますか?運動直後であれば「冷やす」のが良い行動です。そして、運動から時間が経って夜になったのならば、お風呂に入り血流を良くしてストレッチを行いましょう。血行を促すことにより、炎症の治癒を早めます。また、運動後にストレッチやダウン動作をいれることで筋肉痛を軽減することができます。筋肉を回復させるには抗酸化物質を摂取しよう活性酸素のオーバーリアクションを防ぐために、ビタミンCやビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化物質を摂取するのもよいでしょう。柑橘類やごま油などを積極的に料理に使い、不足している分はサプリメントで補うのがおすすめです。これらの栄養素をしっかりと摂ることで筋肉痛を早く治して、筋肉を回復させることができます。参考文献参考[1]:JSTAGE:(PDF)トライアスロン競技後の筋肉痛に及ぼす円皮鍼の効果参考[2]:JSTAGE:(PDF)遅発性筋痛に対する超音波療法の経時的・即時的効果参考[3]:JSTAGE:(PDF)ストレッチングのエビデンス参考[4]:JSTAGE:(PDF)日本人筋肉量の加齢による特徴参考[5]:JSTAGE:(PDF)高齢者の筋力と筋力トレーニングBodykeLIVE 編集部 atorange+bodykelive.general@gmail.comEditorBodykeLIVE